季節の祭りともなると必ずや「焼きまんじゅう」を頬張った思い出があるのが群馬県人。
そんな「焼きまんじゅう」の起源は幕末と見られ、前橋発祥説が有力とされるが、伊勢崎市や沼田市等の店舗も元祖を名乗っており、それぞれ独立した起源であるとする見方もある。そもそも、焼きまんじゅうは、酒を家庭でも造っていたころの副産物。商売のために誰かが発明したという類のものではなさそう。
前橋市の老舗焼きまんじゅう店当主であった原嶋熊蔵はその著書で、自身の2代前にあたる勢多郡飯土井村(現・前橋市飯土井町)出身の原嶋類蔵が、1857年に前橋で売り出したものが創始であるとしている。一方、沼田市の東見屋饅頭店の創業は1825年(文政8)。商売としての創業は東見屋饅頭店の方が古いことになる。
群馬県南部では、古くから二毛作による冬季の麦作が盛んで、おっきりこみといった麺類やまんじゅう類などが好まれていた。埼玉県の秩父市や長瀞町、栃木県の足利市にまで分布していて、繭や絹織物の生産地とほぼ一致することから、繊維関係の商工業者間の交流によって群馬県近隣地域にも広まったものと見られる。
小麦粉に麹を混ぜて発酵させ練り上げる焼きまんじゅうの生地。練った生地を丸め、せいろに並べ発酵していく。生地を寝かせた後に一気にふかし、ふかし上がった生地は4個一串にし焼きあげる。黒砂糖や水飴を加えた味噌だれは、甘辛く素朴な味。少しずつたれをつけながら焼くと香ばしい香りが広がって、食欲をそそる。まんじゅうに焦げ目がつき、味噌だれが絡んだ、熱々を頂くのがうまい。冷めると水分が抜けて固くなるため、生のまんじゅうと別添のたれ、刷毛が入って自宅で焼きたてを楽しめるお土産用も販売している。